自身の歯並びが良くないと、我が子も歯並びが悪くなるのでは?と気にする親御さんは多いようです。親子間で遺伝する身体的特徴は確かにありますが、歯並びも遺伝はあるのでしょうか?
■歯並びに遺伝は関係ありません
歯並びは個々の顎の成長と歯の大きさ、歯の交換のタイミングなどさまざまな要素が関係しています。成長に沿ってお口の機能が正しく成長していれば、歯並びは徐々に整うものです。しかしその要素がどこかで欠けたりタイミングが合わずにズレを生じ、歯並びが悪くなってしまいます。親御さんの歯並びが悪いこと自体がお子さんに遺伝して歯並びも同じような形態になるということは無いのです。
〇なぜ歯並びと遺伝が関係あると思われるのか
歯並びは遺伝しませんが、歯の大きさや骨格(顎の形や大きさ)は遺伝します。親御さんの持つ歯の大きさで顎の大きさに歯が並びきれなかった場合、同じような性質を持った歯の大きさと骨格であれば、親御さんと似た歯並びになる可能性はあります。
また、親子であれば同じ生活習慣や食事内容ですから、顎の成長過程に関わる口腔機能も同じように成長を遂げるという経緯もあるでしょう。親子の顔が似ている特徴があるのはそのためです。親と同じ性質を受け継いだ部分が成長に関わるため、子どもの歯並びが悪くなった場合に遺伝したのでは?と思われがちなのです。
■歯の「性質」は遺伝する
遺伝には「優性遺伝」と「劣性遺伝」があるのを聞いたことがありませんか?親から子へ遺伝する割合の高い要素を「優性遺伝」、遺伝の確立が低いものを「劣性遺伝」といいます。歯もいくつかの優性遺伝と劣性遺伝がありますが、歯の並び自体は顎の大きさや生活環境、癖の要因となります。
〇歯の形や大きさ
歯の形や大きさは遺伝の要素があり、特に優性遺伝として現れるのは歯の大きさです。大きい歯は優性遺伝するため、親御さんの歯が大きめの場合はお子さんも歯が大きくなる可能性があります。顎の成長が弱い場合には、歯が並びきれずに前後ででこぼこと並んでしまう「叢生」(そうせい)になってしまいます。
〇骨格の大きさや形
顎の大きさも遺伝要素があります。顎も歯と同じく大きい方が優性遺伝が強いため、両親のどちらかに顎が大きい傾向があれば、お子さんも大きくなる可能性があります。上顎の成長が前へ突出すると「上顎前突」(じょうがくぜんとつ)、下顎の成長が大きいと受け口と呼ばれる「反対咬合」などの歯並びになりやすくなります。
■まとめ
歯の大きさや骨格は親の特徴が遺伝することはありますが、歯並びは個々の成長過程と口腔機能の発達の調和が取れているかどうかがカギです。お子さんの歯や骨格の特徴を理解し、正しい位置に歯並びをどう導くかは、どうぞ歯科医師に遠慮なくご相談ください。